花びらは音もたてずにひび割れて終わらない神さまの金継ぎ
口蓋を天のひとつと思うときアスファルトから風吹きあがる
美しい古代神話のように見るWikipedia・ブラキストン線の項
触れてはならぬものがあまりに多すぎてパントマイムの手が傘みたい
混ざりあうコラールの声(わたしたち)(一斉に咲く金の毒草)
知っていてしなかったことが押し寄せるその先はもう夜の海です
漂白は生者の仕事 解釈は生者の仕事 生者は匂う
最初から許されていたという嘘は(ジャンプ傘みたい)君に似合うね
感情はまだ生焼けのパンだから横隔膜の熱い暗がり
Web越しに打つ相槌が少しずつずれる 和音が崩れてしまう
息をするそのたび覗く洞がありそこから再び甦るのだ
応答が文字のかたちにならなくて冷製スープの水面は静か
夏の土みずを注げば匂いたつこの世の薔薇のみなゆくところ
参加型アートのように笑い合う 許すというのは自動詞ですか
そうだけど鏡に映るこの人はずっと誰かの真似をしていた
生きるためのまぼろしをもう信じないまた起動するスクリーンセーバー
殺した声、殺された声、声だけの墓場にひとは辿り着けない
あきらめと時に呼ばれる美があってけれどまつ毛が羽ばたいている
灰と雪 双子のように似てるから時に言葉は雪を恐れた
永遠にかみなりの鳴る夜にいる。目を開けたまま眠ってみたい
そのときの光の色を語りあうすべての楽譜はモノクロである
斬られても踊りつづけた赤い靴あれが怒りだ 遠くへ行った
火が移りそして燃えだす沈黙のただ見ていなさいぜんぶ見なさい
許されたなら許さなくては。移調してさらに明るい最後の和音
日焼けした岩波文庫をしならせるどの魂にも焼きごての痕
次に停まる駅の名前を聞いていた窓は映画のように瞬き
喉は笛 きれぎれに鳴りつづけてはいつか砕けて散る土の笛
剥き出しの炎をそっと傾けるいつかは止まる音楽のため