tanka

重い雪 (文学イベント北陸短編集寄稿)

  除雪車の風の気配に目覚めれば無人の道に雪は踊って ニット帽まぶたのようにのしかかりあなたのいない視界はしずか 海鮮に上がる歓声 チャンネルを変えても変えても光ばかりだ 傘の芯腕で殴れば傘布をゆっくりずれていく重い雪 信号が青になるまでだけでいい(電柱のスコップは雪かき用です)...

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リーディング、または小さな石の愛で方について

……その小さい緑の古宝玉は(中略)而して時と処とわたしの気分の相違により、ある時は桐の花の淡い匂を反射し、また草わかばの淡緑にも映り、或はあるかなきかの刺のあとから赤い血の一滴をすら点ぜられる。(北原白秋「桐の花」より) 「#リプライされたCPのイメ短歌イメ俳句をツイートす...

Anuna Francis_Ledwidge translation

八月 (August, Flancis Ledwidge)私訳

八月 日の始まりの薄暗がりにやつてくる 刈り入れの歌の黄に重なる光の白さ 露に濡れた虹踏みしめる その美しさ力強さ             目蓋をもたぬ真昼の瞳が 刈られた小麦を踏む足を焼き 日がな一日、その鳶色へ口づけるに相応しい 落穂に埋もれるコオロギの頭上 積み藁の列の中に...

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Fair is foul, and foul is fair――佐々木紺の透視する目(第十三回北斗賞 佐々木紺『おぼえて、わすれる』を読む)

Fair is foul, and foul is fair: Hover through the fog and filthy air. きれいは汚い、汚いはきれい。 飛んで行こう、よどんだ空気と霧の中。 “Macbeth” Act1,Scene1 A desert place...

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しづかに、モイル (Silent, O Moyle, Thomus Moore)私訳

しづかに、モイル しづかにモイル、轟く水よ 風よやすらかに乱れてはならぬ 悲嘆にくれしリルの娘が星ぼしに 鳥に変じて彷徨へるおのが苦難をささやけり 絶唱をへし白鳥も羽をたためる闇のなか いつかやさしき眠りへつかむや     天上の鐘のやさしく鳴りわたり いつか吾を恐ろしき地上より...

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(記録)「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」、及びそれに関する短歌研究社とのやりとり等について

2019年から2022年にかけての高松霞さんによるプロジェクト「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」、及びそれに関する短歌研究社と高松さんとのやりとり等について、後年の検証用にまとめました。 以下は全て、2023年2月1日現在、 オンラインで収集できる情報によるものです...

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メタフィクションによる「あなた」への一撃――小松岬「しふくの時」について

「しふくの時」(作者:小松岬)は第65回短歌研究新人賞候補作品である。30首からなる短歌連作であるが、短歌研究2022年7月号には一部の歌のみ抜粋して掲載(抄録)された。同賞の選考委員は加藤次郎、斉藤斎藤、栗木京子、米川千嘉子の4名、またこの時の大賞はショージサキによる連作「Li...