fiction

楽しかったね

今日、きみの星がずっと前に燃えていたことを知りました。 きみの星が燃えたのは春、たしか、きれいな花がたくさん咲く時期でしたっけ。星のあった場所からは結晶質の物質がたくさん見つかって、その一部はこの星にも運ばれてきたそうです。でももしそうなら、通信機越しにずっとぼくとお話してくれた...

おはなしを、あるいはエッセイの定義について

伽鹿舎 の主催するWeb文芸誌「片隅」へのエッセイ執筆についてはメールで依頼が来た。テーマや形態は自由、いつも書かれているような感じでお好きなことを……という文面を見て最初に思ったことは連載なんて自分にできるだろうか、でも、一体何を書けばいいだろう、でもなく、そもそも自分は依頼を...

fanfiction tanka written-language

橋を渡る

(ZABADAK「五つの橋」に)

fiction

いつか、パディントン駅で

 クリスマスについて王国で一番詳しいのは多分カトンだった。 ベアが歌いだすのが合図なんだって。 棚の奥で眠るわたしを起こそうと、耳元でカトンは囁く。八月になると王国にはベアが産まれる。毎年毎年生まれるのに、服や顔はその年ごとに違うらしい。どこからか現れて国中を埋め尽くし、やがてず...

essay

たったひとりのパラレルワールド、あるいは音楽の効用について

年末年始のテレビはどのチャンネルでも専用の特集番組が組まれている。いろんなチャンネルがあるのに毎年決まったものしか見ていないことに気付いたのは、きっとSNSを始めてからのことだった。見たこともない番組について楽しそうに話す声が、その番組を毎年見るのが当たり前であるかのような声が液...

appreciation-etc

遠い水、神義論と対峙する「私」ーー服部真里子『行け広野へと』について

 わたしが来たのは地上に平和をもたらすためだと思ってはならない。平和ではなく、剣をもたらすために来たのだ。 (マタイ福音書10章34節) ○経緯  2015年9月20日に開催された歌集『行け広野へと』(服部真里子)批評会では後半の会場発言の時間、この歌集について筆者もコメントさせ...

appreciation-etc

たとえば、「アイ」について

 ーーすべての善き翻訳は「創作」である。  (萩原朔太郎「詩の翻訳について」より)  (初出・ 2015 - 01 - 18 )