七月 ( #文学フリマ東京39 配布ペーパー再録)
五月、六月、そして八月。 七月について、レドウィッジは詩を書かなかった。 nationとあなたが呼んだその国は動員法すら持たないままに IOC難民選手団乗せて小船激しく波に揺れたり 長い冬、であったはずが 黙禱は行われずに進む式典...
Anuna Francis_Ledwidge translation
八月 (August, Flancis Ledwidge)私訳
八月 日の始まりの薄暗がりにやつてくる 刈り入れの歌の黄に重なる光の白さ 露に濡れた虹踏みしめる その美しさ力強さ 目蓋をもたぬ真昼の瞳が 刈られた小麦を踏む足を焼き 日がな一日、その鳶色へ口づけるに相応しい 落穂に埋もれるコオロギの頭上 積み藁の列の中に...
読書の夏、あるいは新宿紀伊国屋書店の医学事典について(鏡の箱に手を入れる4・再録)
読書の夏、あるいは新宿紀伊国屋書店の医学事典について 山奥の古式ゆかしい巨大な日本家屋に住んでいる、そんな親戚はいないけれど、まるで映画「サマーウォーズ」のように、お盆と正月には親戚一同が会するのが幼い頃の倣いだった。それなりに大所帯になるので多い時には大きな炊飯器...
Fair is foul, and foul is fair――佐々木紺の透視する目(第十三回北斗賞 佐々木紺『おぼえて、わすれる』を読む)
Fair is foul, and foul is fair: Hover through the fog and filthy air. きれいは汚い、汚いはきれい。 飛んで行こう、よどんだ空気と霧の中。 “Macbeth” Act1,Scene1 A desert place...
しづかに、モイル (Silent, O Moyle, Thomus Moore)私訳
しづかに、モイル しづかにモイル、轟く水よ 風よやすらかに乱れてはならぬ 悲嘆にくれしリルの娘が星ぼしに 鳥に変じて彷徨へるおのが苦難をささやけり 絶唱をへし白鳥も羽をたためる闇のなか いつかやさしき眠りへつかむや 天上の鐘のやさしく鳴りわたり いつか吾を恐ろしき地上より...
(記録)「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」、及びそれに関する短歌研究社とのやりとり等について
2019年から2022年にかけての高松霞さんによるプロジェクト「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」、及びそれに関する短歌研究社と高松さんとのやりとり等について、後年の検証用にまとめました。 以下は全て、2023年2月1日現在、 オンラインで収集できる情報によるものです...
メタフィクションによる「あなた」への一撃――小松岬「しふくの時」について
「しふくの時」(作者:小松岬)は第65回短歌研究新人賞候補作品である。30首からなる短歌連作であるが、短歌研究2022年7月号には一部の歌のみ抜粋して掲載(抄録)された。同賞の選考委員は加藤次郎、斉藤斎藤、栗木京子、米川千嘉子の4名、またこの時の大賞はショージサキによる連作「Li...